【寄稿】糖尿病性腎症の初期から透析期まで、糖質制限は問題ない 〈腎臓内科医 塚本雅俊先生〉

3月福岡市で開催された低糖人 彩の会に参加した。そこで福岡市早良区にあるつかもと内科 塚本雅俊院長の短いレクチャーを拝聴しました。

塚本先生は、腎臓専門医、透析専門医として鹿児島大学病院などで勤務された20年の経験の中で「なぜこんなにも透析室は糖尿病患者さんであふれているのか」「食事療法は継続が難しく、薬物療法には限界があるので糖尿病が悪化していく」と半ばあきらめの心中だったそうです。

ところが糖質制限に出会い認識が一変。「糖尿病患者さんを救うのは糖質制限しかない!」「他の医者がやらないのなら自分がやろう!」と開業に踏み切ったという〈2割の前向きな医師〉の一人です。

通常、糖尿病の合併症から腎症を発病する過程でタンパク質は制限されますが、糖質制限ではタンパク質摂取は必須です。

果たして、糖質制限をすべきか否か?タンパク質を制限すべきか否か?塚本先生は「糖尿病性腎症でも糖質制限は問題ない!」と断言しています。

今回、塚本先生のご好意によりPocorinへの特別寄稿を頂きました。

糖尿病腎症の予防にも治療にも糖質制限とタンパク質摂取を推奨

腎臓内科医の私が糖尿病を診るにあたっての最大の目標は、糖尿病から透析にさせないことです。

糖尿病初期から糖質制限で血糖を良好に保ち糖尿病性腎症を発症させないことは勿論、尿蛋白がたくさん出ているような進行した腎症のある糖尿病に対しても糖質制限で治療を行っています。

一方、腎臓が悪い糖尿病患者さんへの糖質制限で問題になるのがタンパク質摂取量です。

従来の治療では糖尿病性腎症の患者さんには腎機能に応じてタンパク質制限が指導されています。しかし、以下の3つの理由により当院ではタンパク質の制限は勧めていません

1. タンパク質制限が腎疾患の進行を抑制する根拠が乏しい

タンパク質制限が腎疾患の進行を抑制するという根拠は乏しく、特に日本人の2型糖尿病患者さんの研究ではタンパク質制限の効果は認められていません。

糖尿病へのカロリー制限と同様に「これが正しい」との思い込みではないのかとの再考が必要と思います。

2. 腎臓病から起因する心疾患予防にはタンパク質制限より、糖質制限と塩分制限の優先順位が高い

糖尿病かどうかにかかわらず、腎臓病は心疾患による死亡につながりやすいということです。

わかりづらいと不評な糖尿病性腎症の病期分類が死亡率に着目して作成されていることはほとんど知られていませんが、腎臓病が重くなるほど死亡率が上がるのです。

患者さんの命を守る、すなわち心疾患の予防には糖尿病と血圧のコントロールが重要であり糖質制限と塩分制限が優先され、タンパク質制限は二の次、三の次というのが私の考えです。

3. 高齢な患者さんには栄養補給という意味でもタンパク質摂取は必須

元々日本の高齢者はタンパク質摂取量が少なすぎることが問題視されています。

高齢な患者さんにタンパク質制限を行うと高確率で栄養不良になり虚弱になっていきます。

タンパク質制限が多少腎臓に良かったとしても身体そのものが弱っては元も子もありません。

透析寸前の腎不全の患者でも適切な管理下であれば糖質制限の継続は可能

透析が必要になる直前の重度な腎不全の患者が糖質制限を行う場合は、タンパク質摂取に伴うリンやカリウム上昇の問題がでてきます。タンパク質摂取量が多いと尿毒症物質が増えて症状が出やすくなるのは事実です。

しかし、理解のある腎臓内科医や栄養士の管理下でしたら糖質制限の継続は可能で有益であると考えています。

実際、当院では尿蛋白が多量に出て腎機能がかなり低下している患者さんにも糖質制限を行っていますが、糖質制限を取り入れる前よりも腎機能の低下は緩徐で、透析ギリギリの状態で当院を初診されたお一人を除いて開院以来3年間透析導入に至った方はいらっしゃいません。

また無理なタンパク質制限をして症状を抑えて透析を先延ばしするのはかえって色々な障害を引き起こす可能性があり、現在は早めの透析導入が望ましいと考えられています。

透析開始後は糖質制限&タンパク質摂取とリン制限が重要

透析開始後も血糖コントロールは重要ですので、糖質制限は継続が望ましいです。

タンパク質の摂取はさらに重要になります。透析により大量のアミノ酸が身体から失われますので積極的にタンパク質を取る必要があります。

一方、リンとカリウムは上がりやすくなるのでリンが多く含まれる加工食品や、タンパク質が多くても乳製品は控える必要があります。

カルシウムとリンが高いと血管が石灰化していき寿命が縮みます。透析患者さんの生命予後に最も影響するのがリンだとされているのでリン制限は必須です。

リン酸塩(pH調整剤、乳化剤)が多い食品
ソーセージ、ハム、ベーコン、かまぼこ、プロセスチーズ、モッツァレラチーズ、燻製、かにの缶詰など
チーズはリンが多い食品になります。基本的に牛乳の成分そのままのものはリンが多いです。ヨーグルトなども量が食べられるのでかなりリンが上がります。
同じ乳製品でもバターは、乳脂肪を濃縮したものですのでリンは少なくなっています。
骨ごと食べるような小魚類もリンが多いです。自然の食品ではカルシウムが多い≒リンが多いと思ってください。
透析開始後はカルシウムも透析でバランスを取りますのであえて摂らなくてよいのです。
低糖でも、摂りすぎには気をつけたい加工食品
糖質制限食を実践するときに,気になる糖質はチェックしても,原材料に記載されている食品添加物は余り気にしていないのではないでしょうか。低糖食品であれば何でもOKというのは,糖質制限食を推奨している医師の話を聞くと,どうやら違うようです。

糖質制限を勧める方、勧めない方

糖質制限は、理論上は酸化ストレスが軽くなるので有益かもしれませんが、糖尿病や高脂血症や脂肪肝ではない患者さん(糖質制限が直接有効な病気ではない方)には、今のところ勧めていません。

但し、興味を持たれた場合には指導は行っています。

また、慢性腎炎などでステロイド治療を受ける場合は肥満と糖尿病が発症する可能性があり、糖質制限を行うことが望ましいと考えています。

糖尿病性腎症以外の腎臓病でもタンパク制限の有効性ははっきりしていませんので、勧めていません。

補足:脂質の摂取は?

主食を減らした分はタンパク質と脂質を十分取るように説明しています。

脂肪肝の人にも「食べた脂肪がついているのではなく、過剰な糖質を肝臓が一生懸命脂肪に変えて蓄えようとして、自分が作った脂肪で押しつぶされている状態です。」と説明しています。

お勧めの脂質の種類は、オリーブ油、ごま油、ラードです

塚本先生の自作パンフレット

糖尿病患者さんの初診の際、塚本先生は自作の『糖尿病と糖質制限』パンフレットで説明して糖質制限の理解を得ているそうです。「よそでは全然良くならなかったのに、ここに来てよかった。」と患者さんの糖質制限による改善のインパクトは大きいようです。

『糖尿病と糖質制限』パンフレット をご一読頂き、糖尿病の怖さを知り、まずは日頃の食生活を見直して欲しいです。

つかもと内科
院長 塚本雅俊


塚本雅俊先生

日本内科学会認定 総合内科専門医
日本腎臓学会認定 腎臓専門医
日本透析医学会認定 透析専門医
福岡市医師会認定 認知症相談医
福岡難病指定医
福岡県大牟田市 出身
平成5年 鹿児島大学医学部 卒

ホームページ:つかもと内科

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